ハウアーの備忘録

仕事のコト、セミリタイアへ向けて、効率化などについて語る

“人の死”と向き合う仕事。『特殊清掃』を読んだ感想

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『特殊清掃』という本を読みました。

内容はというと、別世界の出来事なんじゃないかと錯覚しそうなくらい衝撃的でしたね。

いかに自分が普段“死”とかけ離れた場所で生きているか。

本書を読むと否応なく自覚させられます。

今回はそんな『特殊清掃』を読んで感じたこと、思ったことをつらつらと書いていきましょう。

 

『特殊清掃』という仕事

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「特殊清掃」は、今はいろいろなところで使われている言葉だが、もとは私の会社がつくった造語。そして、当社は、この特殊清掃の先駆企業である。仕事の内容は、人間遺体・動物死骸・糞尿・山積ゴミなどに関係する特殊な汚染汚損を処理するというもの。凄惨な現場に遭遇することや過酷な作業を強いられることも多く、陽の目をみることが少ない汚仕事である。

この本を読んでみて初めて、特殊清掃がどんな仕事なのか知ることができました。

業務は遺体の処理だけでなく、動物の死骸やゴミ屋敷の掃除など意外と多岐に渡っているみたいですね。

本書では遺体処理に関するエピソードが中心ですが、一度読んでみると特殊清掃がどんな仕事なのかイメージを掴むきっかけになると思います。

 

仕事として死と向き合うということ

本書を読んでまず感じたことは、一般的な人と筆者ではやっぱり死生観が違うのだなということです。

例え仕事だとしても、これだけ遺体と接していると人の死に対する考え方が一般とかけ離れたものになるんでしょうね。

実際の現場では凄惨な光景が広がっているみたいですが、筆者がそれをあたかも当然といった感じで語っているのが非常に印象的でした。

 

部屋には、床に広がる腐敗液とウジだけが残った。そして、その様を見に来た父親が、床の腐敗液を見ていぶかしがった。「これは?」「人体が腐敗した痕です」「えっ!?」「人体は腐敗するとこうなるんです」

 

〝こんなに多くのウジ、ハエと関わって生きている者はそうはいまい〟

 

作中でも筆者自身が語られていますが、世間的に見れば大変そうに見える特殊清掃という仕事も、やっている当事者からしたらありふれた日常であり、他の仕事と対して変わりません。

それを聞くと、人はどんな環境にも適応できてしまう生き物なんだと改めて実感させられますね。

人の死に関してもそれは同じで、死との距離感によって死生観も変化します。

死が近いものであれば死は日常の一部になり、遠ければ死は意識から排除されたり、恐怖の対象になったりする。

そういう意味では、現代人は死からかなり離れたところで生きていると言えるでしょう。

本書を読むとそういった意識の違いみたいなところを強く感じます。

 

メメント・モリ”という言葉の強さ

作中で最も印象的だったのが、メメント・モリという言葉。

 

中世ヨーロッパで盛んに使われたラテン語の警句に「メメント・モリ(死を思え、死を忘れるな)」という言葉がある。私も、自分の死を考えることは有意義なことだと思う。誰しも一度くらいは考えてみてほしいと思う。

 

これだけ死と向き合ってきた筆者が語るこの言葉には、相当な説得力があります。

「人間いつか死ぬのだから、今を大事に生きろ」と教えられることは多いですが、その投げかけられた言葉にどれだけリアリティがあったか。

メメント・モリは、常に死と対面し続けている人間だからこそ言って意味のなる言葉なのだと思います。

 

常に死を意識せざるを得ない仕事をしていると、毎日のように自分の死を考える。その上で、「いまを大切に生きる」ことがプレッシャーになることが多い。知らない方がいいことを知ってしまい、考えない方がいいことを考えてしまう。難しいことを考えていくと脱出不能の迷路にハマってしまうので、ある時点で余計なことを考えるのをやめることも「いまを大切に生きる」ことに必要な、大切なテクニックかもしれない。

 

特殊清掃員は今度も増えていく

というわけで以上が、『特殊清掃』を読んだ感想となります。

本書は私たちが普段生きている中で知ることのできない世界を垣間見ることのできる1冊です。

又、特殊清掃という職業に留まらず、ひとりの人間の死生観を知ることができるので一読の価値はあると思います。

 

最後に言えることがあるとしたら、特殊清掃は今後も需要が上がり続ける仕事だということ。

生涯未婚率が上がり続け、孤独死が社会問題になった現代では、特殊清掃という仕事がある意味特殊でもなんでもなく、当たり前に存在する職業となりつつある。

この本が初版発行されたのは2012年ですが、それから10年近く経っている現在はさらに問題が深刻化しているはず。

そういう意味でも興味がある方はぜひ手に取っていただきたいですね。

今の空気感などが相まってさらに何か感じ入る部分があるかもしれません。